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公開日:2025年9月16日

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近年、AI(人工知能)が国家戦略の中核をなす時代になってきています。その中で、米スタンフォード大学が公表した「AI国力ランキング」において、日本がわずか2年で 世界4位 から 9位 に転落したという報道が注目を集めています。 note(ノート)+2BizAIdea+2

この変動は一過性のものではなく、日本のAI力・競争力を示す警鐘とも考えられます。本記事では、日本のAI国力の低下の背景、原因、そしてこれから取るべき対策について整理します。


AI国力ランキングとは何か

まず、「AI国力ランキング」が何を測っているのか簡単に確認しておきましょう。

  • スタンフォード大学によるこのランキングは、AI研究の論文数・品質、AI関連特許、データインフラ、教育・人材育成、企業のAI投資・実用化、政策・規制など、多角的な指標を用いて各国の「AI実力」を総合評価するものとされています。 note(ノート)+1

  • その評価基準は変動する可能性がありますが、他国の進展や技術革新の速度が速まっている中で、日本が相対的に立ち遅れると順位が下がるのは自然なこととも言えます。 BizAIdea+1


2年で4位→9位に転落した背景

なぜ日本はこのような急激な順位低下を招いたのでしょうか。主な要因を以下に整理します。

  1. データの利活用・インフラ整備の遅れ

    大量のデータを収集し、それをAIの研究・実用化に活かすための制度設計やインフラが、他国(韓国、UAEなど)に比べて十分に整備されていないと指摘されています。個人情報保護法の運用やデータ共有の枠組み、公共データの開放などの分野で慎重さが仇になっている部分があります。 note(ノート)+1

  2. 人材育成・流出の問題

    優秀なAI人材を国内で育成する土壌がまだ整いきっておらず、また、より報酬や環境の良い国・企業へ人材が流出する傾向があります。大学・大学院での研究支援も、十分な予算や設備、実践機会が揃っているとは言い難い状況です。 note(ノート)

  3. 企業の投資・実用化のスピード

    生成AIをはじめとする最新AI技術の研究・開発だけでなく、それを社会・産業に応用・商用化するスピードで大きく差が付いています。政策支援やスタートアップ支援の量・質で、韓国やUAEが積極的に動いているのに対し、日本は慎重あるいは遅めの対応が目立ちます。 BizAIdea+1

  4. 政策・戦略の継続性と実行力の不透明さ

    AI戦略や研究開発計画を掲げる国内政策はあるものの、それを継続的に実行していくための体制や明確なロードマップ、予算の振り分け、成果の可視化が不十分という批判があります。また、法制度や規制の整備が遅れることでイノベーションを阻むケースもあります。 note(ノート)+1

  5. 国際的な競争激化

    世界規模でAI研究・開発の波が急速に広がっています。特に韓国やUAEなど、政府が国家戦略としてAIを強く推進している国が先行しており、設備投資、人材確保、グローバル企業との連携などで先行優位を築いています。日本としてはこの競争環境の変化にもっと敏感に対応する必要があります。 BizAIdea+1


なぜ「2年」でここまでの差がついたのか――緊急性が高い理由

  • 技術の進歩のスピードが速い:生成AI、マルチモーダルAIなど、新しい技術が次々出ており、研究と実用化で差が生まれやすい。

  • 他国が政策・戦略を急ピッチで強化してきた:AIに限らず、産業政策としてAIを柱に据えている国が増えてきた。日本も構造転換を迫られている。

  • グローバルマーケットでのステーク:AI関連のサービスや製品は国境を越えて利用されるため、後れを取れば国内市場だけでなく国際市場での競争力を失うリスクがある。


日本がとるべき対策と展望

このような「転落」を食い止め、かつ再び上昇に転じるために、日本が取り組むべきことをいくつか提言します。

項目 対策例
データ政策の整備 個人情報保護と利活用のバランスを考慮した法制度の見直し、公共データのオープン化、産業界とのデータ共有基盤の強化
教育・人材育成 大学・大学院でのAI研究予算の増強、インターンや産業界との共同研究の拡充、海外からの研究者受け入れ制度の強化
企業・スタートアップ支援 ベンチャー企業への資金援助や税制優遇、実証実験の場の提供、産業応用を促す官民連携の推進
政策の継続性・戦略性 中長期的なAI戦略を策定し、政権交代や政策変更にも耐えうる制度設計を行う。成果指標を明確にして進捗を可視化する。
国際連携・競争力強化 海外AI企業や研究機関との共同研究、国際コンペティションへの参加、グローバルスタンダードの策定・対応。

日本の強みとこれからの可能性

一方で、日本には依然として強みもあります。高度な基礎研究、ものづくり技術、精密機器、ロボティクス、工場・インフラの制御技術など、AIとの融合で競争優位を築ける分野が多く残っています。これらをうまく活かせば、再びランキングで上位に返り咲く可能性は十分にあるのです。


総論

AI国力が2021年には4位だった日本が、たった2年で9位に後退したという事実は、日本が現状のままでは国際的に取り残される可能性を示しています。しかし、それは転換のチャンスでもあります。データ政策、人材育成、企業支援、政策の戦略性などの面で大胆な改革を行えば、日本は再び世界のAI先進国の一角を占めることができるでしょう。今は「リセットと再構築」の時期とも言えます。

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